イチケイのカラスに思う。

 月9としてはかなり重いテーマを扱っていると思いますが、「イチケイのカラス」というドラマは、毎回考えさせられる内容です。

 ①料理研究家として有名な母親が、「ストレスから子どもを虐待した」と訴えられたケース。

 ②DVに苦しむ母親を救おうと父親を花瓶で殴って死なせた娘とその罪をかぶろうと必死になる母親と娘の支えとなってきた男性。

 ③ジェットコースターの事故で得意だったピアノが弾けなくなった友達のために、無罪となったジェットコースターを運営する会社に入り、大金を奪い手術費に充てようとした養護施設出身の少年。

 ①は具合の悪くなったその子を病院に連れて行くと、医師が目を離した一瞬、ベッドから転落して脳に損傷を受けたことがわかり、母親の無罪が証明されました。

 最近疑わしいというだけで、ワイドショウやネットニュースで叩かれ、裁判にもなっていないうちから「有罪」と言われたように扱われるケースが増えています。

 一度起訴した検察が、後から出てきた事実を隠して、有罪に持って行こうとするというようなことが、本当にあれば怖いことだと思いました。

 ②のDVの問題は以前からあったことですが、特にコロナ禍の中で在宅勤務や外出自粛が叫ばれ、家にいる機会が増えた夫がストレスからDVに走るというケースが増えていることを思い出しました。子を思う親が娘をかばって自分が殺人犯になるという話は、たびたび見てきましたが、一般的な冤罪と違い、かばわれた方の娘も深い心の闇を背負って生きていくことになるような気がして、考えさせられました。

 ③は少年が育った施設での様子やジェットコースターの事故にまでさかのぼって、少年が黙秘を続ける背景に「法律は俺たちを守ってくれない」という法や大人への不信感が原因だと言うことにたどり着きました。

 世の中にあるこのように様々な事件に対して、適切な判決や罰が下されないことが許されず、ネット上で誹謗中傷をする人が増えているのかもしれません。

 ドラマ中の「法は必ずしも弱い立場の人の見方になれるわけではない」という言葉がそれを一番わかりやすく表していたと思います。

 専門家の中には、「裁判官が捜査に当たることはあり得ないし、リアリティがない」と評する向きもありますが、ドラマですので、話の中にある疑問点や見えていなかった真実がわかった時点で見る側が「なるほど」と思えればそれでいいのかと思います。

 ありきたりな締めになりますが、「人が人を裁く」ということは実に難しい事だと思和されるドラマです。